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〈上越地域の歴史を知るシリーズ vol.1〉寛永元年創業 最古といわれる飴屋

 「上越地域の歴史を知るシリーズ」vol.1。今回は歴史上の人物にも愛された「髙橋孫左衛門商店」を紹介します。お店の歴史や現在販売されている飴のことなど、14代当主の髙橋孫左衛門さんと髙橋園子さんに話を聞きました。

創業400年を迎えた老舗

重厚感のある建物は、国の登録有形文化財にも指定されています

 高田城址公園からほど近く、北国街道沿いに店を構える髙橋孫左衛門商店は1624年創業の老舗飴屋です。今でも一番人気の『翁飴(おきなあめ)』は高田藩主の参勤交代の土産にも用いられ、その独特な食感と日持ちのよさから全国に広まったといわれています。
 初代高橋六左衛門は、もとは越前(現在の福井県)藩主松平忠直の家臣でしたが、忠直の子である光長が高田藩主として入府する際、一緒に越前から移り住みました。商売を始めるにあたり選んだのが、越前に製造のルーツがある粟で作った飴だったといわれています。
 
人気を裏付ける丁寧な仕込み
 上品で自然な甘さが人気の『粟飴』。創業時は粟が原料でしたが、1790年に4代目当主が原料にもち米を使用することを考案しました。粟で作った飴は黒い色が特徴であるのに対し、もち米で作ると黄色味をおびています。原料が粟からもち米に変わっても商品名を変えずに販売し続けたのは、米穀の流通を管理する藩令に抵触するのを恐れたためといわれています。

レルヒ祭での飴湯振る舞いの様子。現在でも続く、なくてはならない屋台グルメです

 基本的に仕込みはすべて手作業です。創業当時は薪や練炭で火を起こしていましたが、現在は電気とガスを使用。「『笹飴』の仕込みはなかなかの重労働なので、これだけは唯一機械を使っています」と14代目髙橋孫左衛門社長は話します。また仕込み部屋には一定の室温を保つための設備はありません。職人がその日の気温にあわせて火加減などを変えることで、安定した品質の商品を提供しています。
 過去の戦争により、使用していた金型や鍋などの大半は回収されてしまいました。ですが『翁飴』を作るために必要な型は残っているそうで、現在も修繕を繰り返しながら大切に使用しています。

時代を超えて愛され続ける味

店内には皇室とのつながりを感じられるものもあります

 『東海道中膝栗毛』の著者である十返舎一九が同店を訪れた縁から、自書の中で『粟飴』や店の様子を紹介。また夏目漱石の小説『坊ちゃん』の作中に『笹飴』が登場していることもあり、パッケージには漱石のイラストがデザインされています。
 明治天皇は北陸巡幸の際に『粟飴』や『翁飴』をお土産として自ら購入されたそう。以来、銀婚式の際に献上したり、イギリス皇室へのお礼の品として献上したという記録も残っています。甘党だったとされる昭和天皇は『粟飴』が大好物だったともいわれていることなどから、皇室との関係の深さを知ることができます。

伝統を守りながら進化する

ショーケースの上には春限定の商品がたくさん並んでいます

 味や製法とともに“孫左衛門”の名前も代々受け継がれていて、現在は14代目。世界大戦などにより約7年休業を余儀なくされましたが、営業再開後は今日まで美味しい飴菓子を作り続けています。
 そして髙橋孫左衛門商店では受け継がれてきた味を守りつつ、新しい商品も販売されています。十返舎一九の作品から命名された『金の草鞋(かねのわらじ)』は道の駅あらいの開業にあわせ考案された、飴菓子の概念がくつがえるような商品です。味はかんずり・チョコ・黒ゴマの3種類。特にかんずり味はかんずり特有の香りとピリッとした辛さが新感覚で、お酒のおつまみにもお薦めです。
 また、オンラインでも購入でき、県内外から注文があることからも人気の高さが伺えます。期間限定で有名デパートでも取り扱っています。
 次期当主の園子さんは「当店には日本中探しても似た商品がみつからないような珍しい飴菓子がたくさんあります。ぜひ地域の皆さんに味わってほしいです」と、孫左衛門社長は「先代から受け継いだアイデアと工夫が詰まった商品が並びます。歴史を感じられる店内の雰囲気なども楽しんでもらえるとうれしいです」と話します。

髙橋孫左衛門商店
☎025-524-1188
[住]上越市南本町3-7-2
[営]8:30~18:30ごろ
[休]水、元日(お盆・年末年始は営業)
[P]有

【さくら翁飴(春限定)】

【高田城桜花くびきの里(春限定)】

【あられ飴】

【瑠璃飴】

【笹飴】『粟飴』を練り、熊笹に挟んだ飴菓子。歯にくっつきやすいので、上あごにつけて“絶対かまずに”食べるのが吉

【粟飴】上品な甘さとキラキラと輝く黄金色が特徴。箸などで取ってそのままなめたり、お湯で溶いて飴湯にしたりといろいろな方法で楽しむことができます

【翁飴】ほどよい甘さとモチモチとした食感がクセになる一品で、つい手が伸びる美味しさです。日持ちするので手土産にもぴったり!