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一本のひまわりで心の輪を結ぶ 笑顔いっぱいのひまわり畑


 上越市諏訪地域に咲き誇る、約10万本のひまわり。栽培からひまわりオイルの搾油、商品化まで、6次産業化を目指した〈つくしの里〉が植えているものです。障がい者の就労支援へつながっているこのプロジェクトは、地域の活性化も担っています。プロジェクトのリーダー〈つくしの里〉の田邉信さんに話を伺いました。

休耕田の活用から広がった6次産業
 ひまわりの栽培や土地の提供などに参加し、地域の人や〈つくしの里〉の利用者、職員などと交流することで繋がっていく「つくしひまわりにっこりプロジェクト」。発起人の〈上越つくしの里医療福祉協会〉川室優理事長は、諏訪地域の休耕地を活用し、地域を活性化したいという思いから、ひまわりを植える活動を2010年よりスタートしました。「休耕地や荒地を使用して何とか地域を活性化できないか、と考えたのがはじまりでした。今では関連の土地を含めるとひまわり畑は3ヘクタールにまで広がっています」と田邉さんはいいます。2014年には、ひまわりの種から搾油に取組み、搾油作業やオイルを加工した製品化の作業は、〈つくしの里〉施設の利用者の就労支援に繋ぐことができました。搾油作業所の設置により、ひまわりの栽培から油の精製まで一貫した作業が実現。植栽、刈り取り、搾油、製品化、販売の6次産業化への準備が整いました。

今年は上越妙高駅西口の釜蓋遺跡公園にもひまわり畑を新設。

 2019年「つくしひまわりにっこりプロジェクト」チームを立ち上げ〈つくしの里〉職員とボランティア6名で活動。ひまわり畑を管理するほか、〈つくしの里〉から種を受取り、各家庭や学校、企業等で栽培、種を採取し工房へ納入するボランティアを募り、活動への協力を呼びかけています。

つくしひまわりステーション

 プロジェクトに参加している栽培ボランティアの清水さんは、「少しでも活動の手助けになればよいと思いはじめました。ちょうど空いていた実家の畑でひまわりを植え、開花すると親戚を呼び、流しそうめんなどをして団らんのきっかけになっています。〈つくしの里〉が主催する、ひまわりの花の大きさ品評会では30㎝の大輪が1等になったこともあり、それ以来咲くのを毎年楽しみにしています」と夏の一大イベントになっているそうです。

ひまわりオイルからつながる輪

白いシマ模様よりも黒い部分が多い種。〈つくし工房〉で配布しています。

 ひまわりの種に含まれているビタミンEやオレイン酸は健康に興味のある人なら一度は聞いたことのある貴重な栄養素。〈つくしの里〉ではその栄養がたっぷりと配合されている品種を採用しています。また観賞用のひまわりと比べて花の高さが150~180㎝と少し低く、見ごろは1週間~10日と短期間で花が咲く、観賞と搾油に適した品種を選びました。
 育ったひまわりは刈取り、脱穀、種の乾燥、選別、焙煎、搾油、ろ過、瓶詰の作業を経て製品になります。ひまわりオイルとして販売したり、同施設で作っている製菓製品や、〈あおき味噌〉などの地元企業とコラボレーションした商品に使用されています。

ひまわりの種で広げたい笑顔の輪
 ひまわりは食用の油を搾油するため、ほとんどの畑で無農薬栽培をしています。「無農薬で育てることで、雑草や虫などの被害のリスクがあります。今年植えた種も、たくさんの虫にやられてしまいました。この夏に控えているイベントまでにきれいに咲くか心配しています」と、6次産業の体制を支える田邉さんの苦労がうかがえます。
 また「ひまわりがきっかけで障がい者の就労支援のために役立っていることを少しでも知ってもらえれば」と田邉さんはいいます。〈つくし工房〉利用者で作業にあたる中嶋さんは「今までの作業では自然と触れ合うことが少なかったけれど、ひまわり関連の作業は楽しいと感じるし、命の美しさも学んでいます。暑さの中での作業は大変ですが、地域の人からひまわりを喜んでもらえてうれしいです」と、新たなやりがいが生まれています。ひまわり製品の売上が利用者の給料につながるので、モチベーションにもなります。
 田邉さんは「地域の人にこのプロジェクトに自主的に参加してもらい、まずはひまわりを育て、観賞する楽しさを知ってほしいです。さらに〈つくしの里〉に種を預けてもらえればさらなる就労支援につながるこの取組みに少しでも多くの人に賛同してもらえればよいと思っています」と活動への思いを話してくれました。また、「家庭も企業も関係なく使用されていない土地や庭先に花を植えることでひまわりの輪が広がり、この活動が上越市の6次産業として強く根付くことを願っています」と大きなビジョンを広げています。

[ひまわりスポット]
●つくしの里(上越市南新保897)
 開花時期/8月上旬〜下旬
●上越妙高駅西口(釜蓋遺跡公園花畑)
 開花時期/7月中旬
●県立謙信公武道館(南側)
 開花時期/8月末見込み

[information]
第12回越後ひまわり祭・ひまわりマルシェ
ひまわり製品の販売など、8月下旬予定
主催・越後ひまわり祭実行委員会