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「災害に想定はない」 能登半島地震被災者招き たき火囲んでお話会 長者ケ原遺跡公園

輪島市海士町で海女を生業とする早瀬さん(右)が能登半島地震の被災状況を語った。隣は、能登で災害復興ボランティア活動を続ける糸魚川市の山田さん
市内外から集まった人たちがたき火を囲んで話を聞き、被災地に思いを寄せながら個々に防災意識を高めた

 糸魚川市一ノ宮の長者ケ原遺跡公園で20日夕方から夜にかけて、能登半島地震の被災者から発災時の状況や現状などを聞くお話会が開かれた。市内外から約35人が集まり、たき火を囲みながら〝生の声〟に耳を傾けて被災地に思いを寄せ、改めて災害に対する物心両面の備えを考えた。

 同市東寺町2のヒスイ加工販売「ぬなかわヒスイ工房」の山田修さんが代表を務める「ひと・もの・共感 Save Noto!サポーターズ」による主催。山田さんは能登で災害復興ボランティア活動をしており、その縁で出会った輪島市海士(あま)町の海女歴約40年の早瀬千春さんを話し手に迎えた。

 激甚災害に見舞われるとどうなるか。早瀬さんは発災当時からの状況を語った。「揺れが収まらない。立つことができず、四つんばいになったまま」。壁が破れ、柱が割れて空が見えた。茶棚が倒れた。自宅は全壊した。向かいの家もつぶれた。

 道が寸断され、被害も広域。待っていても消防は来ない。倒壊家屋からの救助はその場にいる人、ある道具でやるしかなかった。山が崩れて道が土砂でふさがれた中を歩いて、食料を取りに行った。

 一次避難所は大勢の避難者で入れず、車中泊した。眠れず、喉が渇いた。風呂は2週間入れず川の水で頭を洗った。停電復旧は2~3週間、断水復旧は3~4カ月かかった。「災害に想定なんてない。正解がないところでいろいろ考えて動かなければならない」。

 経験から、そろえておく防災品として、両手が空くようヘッドライトやつなぎの防寒着、着替え用に大判の巻きタオル、体を拭くウェットシート、簡易トイレ、現金などを挙げた。「備蓄品は家の外側に面した出しやすい所に、家族一人一人が持つように」とアドバイスした。

 参加した市内の60代女性は「人ごとでない。切実に感じた。どんな災害がくるか分からない。生き延びる力を持つため、きちんとした備えをしておかなくては」と話した。

 早瀬さんは先祖代々生業として受け継ぐ海女を15歳から始めた。「こんなに長く(海に)入れないのは初めて」。発災からまもなく半年になる。復旧復興はまだ遠い。

市内外から集まった人たちがたき火を囲んで話を聞き、被災地に思いを寄せながら個々に防災意識を高めた