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能登半島地震 一瞬で海岸のみ込む 直江津地区、津波の猛威 橋本さん(上越市五智2)崖上で撮影

1日に直江津の海岸を襲った津波。激しい波の音とともに白波が海岸をのみ込んだ(上越市五智2、橋本さん提供)
翌2日に同じ場所で撮影した写真。前日の津波が眼前の海岸全てをのみ込んでいたのが分かる(同)

 能登半島地震の発生から1週間余りが経過した。上越地域では元日に突如襲った激しい揺れ、津波の被害から市民生活が落ち着きを取り戻しつつある。上越市五智2の橋本光雄さん(91)は今回の津波到達の様子をカメラに収めていた。人生3度目となる津波との遭遇、撮影までの経緯を聞いた。

 橋本さんは妻、息子夫婦と自宅で過ごしていた。午後4時10分ごろ、激しい揺れに見舞われ、立っていられず4人とも壁や柱などにつかまり、揺れが収まるのを待った。そして携帯電話に津波警報が着信。海抜9メートルの自宅の方が安全と判断し、家族は家にとどまり、橋本さんは被害状況の確認のため、カメラを手に外へ。そこで海岸の様子が気になり、「これまでにも津波を目撃していたので、今回は撮っておきたいと思った」と、つい海の方へ足が向いた。

 橋本さんは新潟地震(1964年)、日本海中部地震(1983年)の時に直江津で津波を目撃。新潟地震では海岸や河口で少しずつ潮位が増していくのを、日本海中部地震では関川を遡上(そじょう)する様子を目にした。当時は国鉄(現JR)に勤務し、新潟地震では液状化現象で新潟市の港湾鉄道施設にも被害が及び、何人もの同僚が応援に向かったのを記憶していた。

 自宅裏から住宅街を抜け、水族博物館の駐車場に20~30台の車が止まっていた。避難して来たとみられる人もいた。道路を渡り、海岸近くの崖に立つと、間もなく津波が来た。沖に白波が立ち、防波堤を乗り越えると、あっという間に海岸へ到達した。消波ブロックから砂浜を全てのみ込み、足元の崖の半分ほどの高さまで迫った。波が見えてから到達までに1分もかからず、すぐさまシャッターを切った。辺りが暗くなる前に帰宅したが、家族からは厳しく怒られたという。

 幸いにして自宅に大きな被害はなかったが、「まさか正月にこんなことがという気持ち」と、いまだに信じられないという様子。「たまたま無事で撮れた写真だが、防災などの役に立てば」と願っていた。

翌2日に同じ場所で撮影した写真。前日の津波が眼前の海岸全てをのみ込んでいたのが分かる(同)
津波の写真とともに当時の状況を話す橋本さん。これまでに遭遇した津波についても語った(4日、自宅で)