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新潟労災25年度めど閉院 中央など6病院へ機能再編 上越地域医療構想調整会議  

上越医療圏における医療機能の短期再編計画案について協議した(4日、上越市春日野1の上越医師会館)

 県は4日、病床数の減少や医師不足で機能低下が著しい新潟労災病院(新潟労災、上越市東雲町1)の医療機能再編案を、上越地域3市の医療関係者や自治体で構成する「上越地域医療構想調整会議」(議長・高橋慶一上越医師会長)に示した。

 再編案は新潟労災の医療機能を、6病院で病床の増床をせずに分担するもの。協議の結果、関係者間で了承された。新潟労災は段階的に縮小し、2025年度末をめどに閉院する予定。

 再編により新潟労災の医療機能を担うのは県立中央病院、上越総合病院、上越地域医療センター病院、知命堂病院、さいがた医療センター、県立柿崎病院、の6病院。

 県立中央と上越総合は救急搬送や整形外科などの手術、急性期入院を引き受ける。上越総合は現在医師を派遣し新潟労災で行っている人工透析を、準備が整い次第上越総合の院内へ集約する。

 上越地域医療センターは手術室に余裕があるとして、新潟労災の歯科口腔(こうくう)外科を引き継ぐほか、回復期リハビリ入院の多くを受け入れる。受け入れきれない部分は知命堂、県立柿崎、さいがた医療センターの3院が引き受ける。

 外来患者は上越地域の病院・クリニックで受け入れる方針。救急のウオークイン(独歩で受診する)患者の受け入れ先は県立中央、上越総合のほか、休日・夜間診療所を充てることにしている。

◇設備、スタッフ確保に課題山積

 4日の医療構想調整会議で、新潟労災の医療機能を地域の病院が分担することは了承されたものの、医療を担うスタッフの確保や必要な設備の整備については、課題が山積している。

 県立中央の長谷川正樹院長は、年間1000件を超える新潟労災の整形外科手術引き受けについて「現状の手術室では、新潟労災の閉院後(手術件数が増え過ぎて)破綻する。スピード感を持って準備を進めたい」とした。上越地域医療センターは歯科口腔外科を引き受ける方針だが、手術室の老朽化と今後予定されている病院建て替えのはざまにある。古賀昭夫院長は「病院建て替えを前提にした手術室の修繕は、無駄なコストにもなる」と述べた。

 新潟労災からの医療スタッフ移行も大きな課題だ。回復期リハビリ入院者を受け入れる知命堂の森川政嗣院長、県立柿崎の太田求磨院長は人手不足の現状に加え、さらなる患者の受け入れにはスタッフの増員が不可欠とした。

 上越総合の篭島充院長は「新潟労災の患者も職員も、地域も今後を不安視している。いかに迅速に受け入れができるかが役割。上越総合に求められる役割を真摯(しんし)に果たしたい。ただし手術室、スタッフとも潤沢ではない」と述べた。

 県内の医療関係者は「県下全域、慢性的な医療スタッフ不足が続いている。今回の機能再編は手術室のスタッフ確保が一つの課題になっているが、手術室のスタッフはすぐに育つわけでない。いかに患者とともに機能引受先の病院へ移ってもらえるかが課題になる」と話していた。

◇再編計画明示「大きな前進」 新潟労災運営者

 新潟労災病院は独立行政法人の労働者健康安全機構(川崎市)が運営。21年からは腎臓内科の常勤医が不在となり、新潟大と上越総合病院が医師を派遣し人工透析を継続。今年4月には内科の常勤医も不在となり、常勤医は11人になっている。

 労働者健康安全機構の担当者は会議終了後、報道陣の取材に対し「地域の関係者が尽力し、再編計画を示してくれた。病院職員が最も気にしていることが明らかになった。大きな前進と考えている」とした。

上越医療圏における医療機能の短期再編計画案について協議した(4日、上越市春日野1の上越医師会館)
2025年度末をめどに閉院する新潟労災病院