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スクリーニングなど確認 上越市で原子力防災訓練 

車両に付着している放射性物質などを調べる訓練(上越市の直江津港南埠頭(ふとう)緑地公園)

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の重大事故を想定し、UPZ(原発の半径5~30キロ圏内)内の住民が避難する際のスクリーニングや避難手順を確認する訓練が29日、上越市内で行われた。花角英世知事や柏崎市の桜井雅浩市長、上越市の中川幹太市長らが視察した。

 直江津港近くに設けられたスクリーニングポイントには上越、柏崎市のUPZ住民が自家用車や大型バスで到着。車両が止まるたび、係員が車両に付着した放射線量を計測したり、必要に応じて拭き取りなどの簡易除染、運転者や同乗者の検査や簡易除染を行った。

 県によると、直江津でスクリーニングする車両の台数は33台で、昨年の訓練の3倍。日本原子力研究開発機構(JAEA)が保有する車両を使用し、運転者や同乗者の体表面の汚染有無の測定も訓練に盛り込んだ。

 ユートピアくびき希望館(頸城区)には、上越市内のUPZに居住する住民の避難所や柏崎市民向けの避難経由所が設けられた。柿崎区から仲間と3人で避難してきた男性は「訓練を経験するのは2回目なので、とてもスムーズだった」と話していた。



◇避難受け付けデジタル技術必要 柏崎市長 厳冬期の訓練検討を

 花角英世知事、柏崎市の桜井雅浩市長、上越市の中川幹太市長は29日、上越市で行われた原子力防災訓練を視察し、それぞれ報道陣の取材に応じた。

 花角知事と桜井市長は避難所での住民受け付けに関し、県防災アプリやマイナンバーカードといったデジタル技術を積極的に導入する必要性に言及した。花角知事は「アプリは訓練を通して合理的なものに改良していく。住民への浸透や受け付けをする(自治体)側の習熟度も、訓練を重ねながら高めていく」、桜井市長は「避難時の本人確認は、市民の70%以上が保有しているマイナンバーカードが利用されるべきだ」と述べた。一方、中川市長は「スマートフォンやマイナンバーカードは確実に持ってきてくれるか分からない」として、従来通り紙ベースでの避難受け付けが適当だとした。

 住民の避難については昨年12月、大雪のため国道8号と北陸自動車道が同時に通行止めとなり、積雪期の避難ルート確保が課題に浮上している。花角知事は「まずは(道路を)止めないための体制強化、やむを得ず止めたとしてもすぐに再開できる態勢づくりが必要」、桜井市長は「冬・夜間・積雪時は移動そのものがリスクになる。最も厳しい条件下での訓練は必要かもしれない。国には検討してほしい」と述べた。中川市長は「局所的な豪雪も想定しうる。UPZにおける屋内退避の原則を守りながら、複合災害に臨機応変に対応できるかは、想定と訓練を積み重ねていくしかない」とした。